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先進的な国や企業が掲げ始めた1.5℃目標を読み解く。

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この記事のポイント

  • 2℃と1.5℃では、地球環境への被害が相当違う。
  • 近年では、先進的な国や企業が1.5℃目標を掲げ始めた。
  • 1.5℃目標は“企業としてどこまでやれば十分なのか分からない”のが現状。

地球温暖化による気温上昇を、産業革命以降で1.5℃に抑えましょう、という努力目標があります。数年前まで2℃以内に抑える目標でも大変だ、と騒いでいたのですが、最近ではこの数字を目標にしている国や企業が少なくありません。何が起こったのでしょうか。

2℃と1.5℃は、人体では感じられない程度の差ですが、被害が相当違います。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、

IPCCによると、地球温暖化を2°Cでなく、1.5°Cに抑えれば、人間と自然生態系にとって明らかな利益となり、より持続可能で公平な世界を確保することにも資する可能性があります。

ということです。1.5℃のメリットも簡単に説明されていますので、国際連合広報センターのプレスリリースから抜粋します 。

地球温暖化を2°C以上ではなく、1.5°Cに抑えることによって、多くの気候変動の影響が回避できることを強調しています。例えば2100年までに、地球温暖化を1.5°Cに抑えた場合、世界の海水面上昇は2°Cの温度上昇の場合に比べて10cm低くなります。夏季に北極海が氷結しない可能性も、気温上昇2℃の場合の10年に1回以上に対し、1.5°Cの地球温暖化の場合には1世紀に1回となります。1.5°Cの地球温暖化の場合、サンゴ礁は70~90%減少しますが、気温上昇が2°Cに達した場合、サンゴ礁は事実上全滅(99%超が死滅)してしまいます。

IPCC第2作業部会共同議長のハンス=オットー・ポートナー氏は「特に、1.5°C以上の温暖化が一部の生態系の喪失など、恒久的または不可逆の変化と関連づけられるリスクを増やすことを考えれば、ほんの少し温暖化が進むだけでも、大きな問題だと言えます」と語っています。

このプレスリリースの先のリンクが膨大な英語資料です。興味はあっても英語はちょっと、と言う方は日本語の資料として最も充実していると思われる、IGESの資料 をご覧ください。これでもなかなかすべては読めませんが、つまみ読みをするには悪くないです。

ということで、1.5度に抑制するメリットは思いのほか大きいのですが、

地球温暖化を1.5°Cに食い止めるためには、土地、エネルギー、産業、建築、輸送、都市のそれぞれで「急速かつ広範な」移行が必要

ということです。

これをうけて一部の先進的な国や企業が、1.5度を目標として掲げ始めたのです。これだけの変化が予想されるので、これを見越して経営戦略を立てることで、リスクがチャンスになり得ますし、イメージ戦略上もプラスです。それに気づいた他の国や企業も、この競争に負けてはならないと、我先にと動き始めているというのが現状です。

つまり、少数のリーダーさえいれば大変革は起こせる、ということなのでしょう。音楽配信からスマホ決済まで、スティーブジョブズのおかげで実現しています。
一方で、合意を得ながら進む調整型の手法では、多くの関係者の理解を得る必要があり、大きな変化を起こしにくい、というのは世の常のようです。

1.5度に抑制するための目標は、「2050年までに全世界の温室効果ガスの排出ゼロ」だそうです。「2030年までに2010年の水準から約45%減少」ともいわれています。もちろん、法的な縛りはありませんし、個別の企業への数字の落とし込みもされていません。つまり、“企業としてどこまでやれば十分なのか分からないが、最大限の努力が必要”、という先が見えないカオス状態での競争が始まっているのです。

競争の先頭を目指すのか、遅れなければよいのか、独自路線を開拓するのか、特に何もせずに待ちの姿勢で行くのかなど、コロナ、東京オリンピック・パラリンピック後には、世界の最重要課題として会社の姿勢が問われることになるでしょう。

(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)

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