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男性用小便器のハエの的は「ナッジ」の成功例|ナッジが日常の行動に変化を与え、環境課題解決の救世主となる日はもうすぐ⁉

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この記事のポイント

  • 「ナッジ」とは、行動経済学や行動科学分野において、人々が強制によってではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法のこと。
  • 「ナッジ」によって、廃棄物の分別、省エネなどの行動も好ましい方向に促すことが可能。
  • 環境省が日本版ナッジ・ユニットの事務局になっている。

ナッジとは

ナッジってご存知でしょうか?ナッジという言葉を知らなくても、書店で「行動経済学」と銘打った本が売られているのを見たことがある方は少なくないでしょう。行動経済学は、「人間は必ずしも経済的に合理性が高い行動をとるものではない」ということを研究しているのですが、内容は心理学に近いものです。

環境省が日本版ナッジ・ユニットの事務局

ナッジとは、「そっと後押しする」という意味ですが、平たく言うと、人間の行動を強制するのではなく、表現、見た目、雰囲気によって誘導することを指します。有名な話としては、男性用小便器のハエの的がありますが、他にもスーパーやカフェテリアでの陳列方法、投票用紙での候補者名の表記順序によって選択が左右されることもあるそうです。

イギリスが政府として初めて本格的にナッジを取り入れたのですが、これの日本版=日本版ナッジ・ユニット(関係府省等や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組)を環境省が事務局となって運営しています。

http://www.env.go.jp/earth/best.html

人間は強制されると気づきますが、誘導されるということですから、本人はそのことに気付きもしないということです。これを権力者が国民を秘密裏にマインドコントロールするために使っているのであれば恐ろしい話ですが、オープンな形でよりよい社会を築くという人類共通の目標に向かって、人々の行動を無理なく自然に変容させるためのツールの一つとして使っていこうということのようです。倫理面での配慮も必要ですし、政府としては気を遣って説明をしていますが、こちらのサイトでは比較的ストレートに表現しています。

https://courrier.jp/news/archives/99941/

ナッジは世界的にも注目されている社会課題解決のための手段

既に様々な実績があるようですが、当然ながら廃棄物の分別、省エネなどの行動も好ましい方向に促すことができます。実際、環境・エネルギー、健康・医療、教育、徴税、行政の効率改善、働き方改革、差別撤廃、SDGs等の様々な社会課題の解決に適用し得るものとして世界的に注目されているそうです。もちろん、環境省が日本版ナッジ・ユニットの事務局であるということは、環境問題の解決策の一つになるとの考えがあってのことでしょう。“誘導される”と言うとよい気分ではありませんが、既に我々は広告などによって購買行動を誘導されています。そう考えれば、政府が“オープンな形”で「政策実現のための手段として使っている」と説明しているのであれば、むしろ良いことだと思います。

特に環境問題は、人々のちょっとした行動の集積が大きな結果をもたらすのですから、環境監査や教育に力を入れるだけでなく、日常の行動に変化を与えるナッジのような仕掛けを研究、適用するのは有効でしょう。費用もあまりかかりません。例えば分別ボックスの置き場所、大きさや形、色、表示や、分別作業スペースの有無などで、分別精度がどの程度変わるかを研究してみてもよいかもしれません。

まだ多くはありませんが、日本語のウェブ上でも環境、廃棄物、省エネ&ナッジの検索でヒットしますし、OECDが発行している下記資料が日本語訳され「環境ナッジ」という名称の書籍も出版されたところです。これから広まっていく手法だと思いますので、注目しましょう。

「Tackling Environmental Problems with the Help of Behavioural Insights」

https://www.oecd.org/env/tackling-environmental-problems-with-the-help-of-behavioural-insights-9789264273887-en.htm

(リバーグループ/メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社 シニアコンサルタント・行政書士 堀口昌澄)

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